“普通”のふりをして生きる子どもたちと、見過ごされる不調の背景
■ 低血糖の症状に「慣れてしまう」子どもたち
近年、食事の質とタイミングの乱れによって、乳幼児〜小学生の間で機能性低血糖の兆候が増えています。これは以前からお伝えしてきたことですが、では、その子どもたちが成長したらどうなるのでしょうか?
結論から言うと、「低血糖の異常な状態」に慣れてしまい、それを“普通の体調”として生きるようになるのです。
■ 体調不調が「生まれつき」になるという落とし穴
体が栄養的な影響によって常に不安定な状態にあるにもかかわらず、本人も家族も「この子はこういう子だから」と適応してしまう現象が起きます。
たとえば、
「お菓子をあげないと怒って手がつけられない」
→ 「お菓子をあげると機嫌が直る」
というサイクルに親子が慣れてしまい、本来そこにある“栄養の問題”に目が向かなくなるケースが非常に多く見受けられます。
このようにして、根本原因への視点が失われてしまいやすいのです。
■ 学校生活での「困りごと」と発達支援機関への流れ
実際、園や学校で「キレやすい」「落ち着きがない」といった行動が見られ、担任や支援機関の紹介で発達障害の可能性を疑われるケースもあります。
しかしここで大切なのは、
他人との比較で見えてくる“差異”は気づかれても、家庭内における日常の不調は「個性」として慣れてしまいやすい
ということです。
つまり、生活環境や食習慣に原因があるかもしれないという視点を持ちにくいのです。
■ 成長期に与える深刻な影響
低血糖状態が続くと、体にも心にも深刻な影響が現れます。
- 腸内環境の悪化
- 副腎疲労や慢性疲労
- アトピーや自己免疫的な症状
- 成長ホルモンの合成障害
これらの症状は、体を作る“材料”が足りていない状態で起きることがほとんどです。
とくに、人生の中でもっとも身体が成長するのが、0〜12歳の時期。この大切な時期に栄養が不足していれば、未来の体づくりにも遅れや不調が出てしまうのは当然のこととも言えます。
■ 低血糖が心に与えるダメージ
低血糖は体の症状だけではなく、メンタルにも強く影響を与えます。
- 自信の喪失
- 自己肯定感の欠如
- 無気力や集中力の欠如
- 失敗体験の積み重ね
その背景には、低血糖時に分泌されるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)の影響があります。
これらは短期的にエネルギーを引き出すホルモンですが、過剰に分泌されると、攻撃的になったり、理性的判断ができなくなったりします。
その結果、
叱責 → 自己嫌悪 → 自尊心の低下 → 「自分はだめだ」の固定化
という悪循環に陥りやすい。
■ 自分を知る前に、本来の自分を取り戻すこと
子どもの心の成長は、年齢ごとに異なる課題があります。
- 0〜3歳:無意識で世界と繋がりながら育つ
- 4〜6歳:自我の芽生えと親密な関係の中で育つ
- 小学3〜4年生:「自分とは何か」を考えはじめる時期
この「自立のはじまり」とされる時期に、栄養的・神経的な不調が続いていたら“本当の自分”を知ることができるでしょうか?
子どもの自立には“良好な身体状態”が前提です。
■ 低血糖を「見えないトラブル」として終わらせないため
思春期は、「私はどう生きるのか」という課題を突きつけられる時期です。
でもその準備は、もっと幼いころから始まっています。
低血糖を“生まれつき”と捉えてしまうと、自己理解も、自己成長も、誤った前提でスタートしてしまいます。
子どもが「自分はできる」「自分はやっていける」と信じられるようになるには、まずその“心と身体の土台”が健やかであることが必要です。
■ 大人が知っておきたい、子どもの「本来の姿」
低血糖は万病のもとです。
体調・感情・発達…どれも切り離せない一体のものであり、その「ちょっとした不調」が積み重なることで、子どもの未来の可能性に蓋をしてしまうこともあるのです。
その子の「気質」「生まれつき」というラベルの前に、
それは“栄養の不足”が原因かもしれない。
この視点を大人が持っていることが、子どもを守る第一歩になると信じています。
※当記事は医療行為を目的とするものではなく、筆者の経験と学びに基づく見解をもとに記しています。体調に不安がある場合は医療機関にご相談ください。